「なぜ辞めたんですか」に
何と答えるか
本音を言えば「うちでも同じ理由で辞める」と思われる。作り話は深掘りで崩れる。使うのは3つ目の道です。事実は変えず、語る側面だけを変える。
面接官が退職理由を聞くのは意地悪ではありません。確かめているのは1つだけです。「同じ理由で、うちも辞めないか」。ここに答えていれば通ります。そして、あなたの理由はたぶん珍しくありません。人間関係で辞めた人は男性9.0%・女性11.7%。面接官も、同じ統計の中にいます。
本音の言い換え5パターン
原則は1つだけです。不満を語らず、実現したいことを語る。嘘はつきません。事実は変えず、語る側面を選ぶだけです。
本音は変えずに、面接で言う言葉だけを変える
| 本音 | このまま言うと落ちる | 面接で言う言葉 | なぜ通るのか |
|---|---|---|---|
| 上司と合わなかった | 「上司と合わず、人間関係が理由です」 | 「評価の基準が上長の裁量で決まる職場でした。基準が明示される環境で成果を出したいと考えました」 | 人ではなく仕組みの話にしている。相手を責めていないので「うちでも揉めそう」と思われない |
| 残業が多すぎた | 「残業が月80時間で限界でした」 | 「繁忙期の対応が属人化していて、改善の提案が通りにくい体制でした。仕組みから関われる仕事に移りたいと考えました」 | 「うちも忙しいですよ」と返されない。量ではなく構造の話にしている |
| 給料が上がらない | 「給与が上がらないからです」 | 「成果と報酬の連動が見えにくい制度でした。評価基準が公開されている環境で働きたいと考えました」 | 金額そのものではなく納得感の話にしている。「お金だけが目的」に見えない |
| 評価されなかった | 「正当に評価されませんでした」 | 「担当範囲が固定で、幅を広げる機会がありませんでした。もう一段上の役割に挑みたいと考えています」 | 被害者の立場に立たない。自分が何をしたいかで終わっている |
| 会社の先が不安 | 「会社の業績が悪くて」 | 「主力事業を縮小する方針が示され、自分が伸ばしたい領域と離れました」 | 事実として述べているだけで、悪口になっていない |
共通するのは ①前の会社を悪く言わない ②「〜が嫌だった」ではなく「〜をしたい」で終える ③嘘はつかない の3つです。
ハラスメントや健康上の理由など、事実として重いものがある場合は、詳細を語らず「働き方を見直す必要がありました」で止めて構いません。踏み込んで聞かれない限り、それ以上は話さなくて不利にはなりません。
実際、みんな何を理由に辞めているか
言い換えを考える前に、数字を見ておいてください。自分の理由が特殊だと思っていると、言葉が固くなります。
転職した人が前の職場を辞めた理由(令和6年・転職入職者)
| 理由 | 男 | 女 |
|---|---|---|
| その他の個人的理由 | 20.2% | 24.3% |
| 定年・契約期間の満了 | 14.1% | 10.7% |
| 給料等収入が少なかった | 10.1% | 8.3% |
| 職場の人間関係が好ましくなかった | 9.0% | 11.7% |
| 労働時間、休日等の労働条件が悪かった | 8.6% | 12.8% |
| 会社の将来が不安だった | 7.4% | 5.1% |
| 会社都合 | 5.2% | 5.3% |
| 仕事の内容に興味を持てなかった | 4.4% | 3.6% |
| 能力・個性・資格を生かせなかった | 3.8% | 3.7% |
出典:厚生労働省「令和6年雇用動向調査」。転職して入職した人が、前の職場を辞めた理由です。給料・人間関係・労働条件の3つを足すと、男性27.7%、女性32.8%。3人に1人です。2026年9月19日に確認しました。
給料・人間関係・労働条件。この3つで、男性の27.7%、女性の32.8%が辞めています。3人に1人です。面接官はこの分布の中で採用をしていて、面接官自身も、たいていこの中のどれかで前の会社を辞めています。
だから、「その理由で辞めたこと」自体は減点ではありません。見られているのは、同じことがこの会社でも起きるのか、起きたときにどうするのかです。そこだけ答えれば足ります。
言い換えないほうがいい理由もある
「全部ポジティブに言い換えろ」と書いてある記事が多いのですが、理由によって扱いが違います。
理由ごとに、言い換えの要不要は変わる
| 本音の理由 | 扱い | 理由 |
|---|---|---|
| 労働時間・休日 | 事実のまま言ってよい | 時間数と休日数は客観的な事実で、確かめれば分かります。女性では12.8%で最も多い個人的理由です。数字で言えば愚痴になりません。「月平均の残業が◯時間でした」で足ります |
| 会社都合・契約期間の満了 | そのまま言う | 自分の意思ではありません。男5.2%・女5.3%が会社都合です。隠すと経歴と合わなくなります |
| 人間関係 | 事実の形に直す | 「合わなかった」は主観なので確かめようがなく、相手にも同じことが起きると読まれます。「評価の基準が上長の裁量で決まっていた」のように、仕組みの話に置き換えます |
| 給料 | 金額以外の軸を足す | 金額だけだと「もっと出す会社があれば移る」と読まれます。下の表のとおり、転職で減る人も3割います。何をして上げたいのかまで言う |
言い換えが要るのは、主観が入る理由だけです。数字で言える理由は、そのまま言ったほうが早く伝わります。
転職して賃金はどうなったか(令和6年・転職入職者)
| 割合 | うち1割以上 | |
|---|---|---|
| 増加 | 40.5% | 29.4% |
| 減少 | 29.4% | 21.7% |
| 変わらない | 28.4% | — |
出典:同調査。増えた人は4割、減った人は3割います。「給料が理由」とだけ言うと、面接官の側からは「うちでも同じ不満になるのでは」と見えます。2026年9月19日に確認しました。
転職して賃金が増えた人は40.5%、減った人は29.4%です。3割は下がっています。だから「給料が上がらないから辞めました」だけでは、面接官は判断できません。「何をして上げるつもりか」までをセットにしてください。
落ちる型
言い換えの前に、これをやると内容以前に落ちます。
この4つは、言い方を直しても戻らない
| やってしまうこと | 面接官がどう受け取るか | 代わりにどうするか |
|---|---|---|
| 前の会社や上司を悪く言う | 「うちのことも外で同じように言う」 | 主語を会社から自分に戻す。「〜されました」を「〜したいと考えました」に置き換える |
| 作り話をする | 深掘りで時系列が合わなくなる。前職への在籍確認で崩れることもある | 事実は動かさない。話す範囲を狭めるのは嘘ではない |
| 「御社なら〜だと思いました」で終える | 調べていないのが分かる。どこでもいい人に見える | その会社の具体的な事業名・職種名を1つ入れる |
| 理由を3つも4つも並べる | 本当の理由を隠していると感じる | 1つに絞る。15秒で結論まで言い切る |
とくに1つ目です。正しいことを言っていても、悪口の形をした瞬間に評価は下がります。
深掘りされたときの受け方
言い換えが通ると、たいてい次が来ます。「具体的には?」。ここで崩れる人が多い。
用意しておくのは、言い換えた内容を裏づける事実を1つだけです。たとえば「基準が明示される環境で」と言ったなら、「評価面談が年1回で、目標の設定が口頭のみでした」という事実を1つ添える。複数出すと言い訳に聞こえます。
答えたくない範囲に入ってきたら、「そこは差し支えがあるので控えさせてください。ただ、退職を決めた理由は先ほど申し上げたとおりです」で構いません。言いよどむより、線を引いたほうが印象は良くなります。→ 深掘りされたときの受け方
想定質問と答えを無料面談で一緒に組み立てる
職種ごとに聞かれ方は変わります。面談は無料・オンライン対応です。
- 面談は無料・オンライン対応です
- 面談は無料。求人を見てから、応募するかどうかを決められます
- 選考結果を保証するものではありません
他に聞かれる4つの質問
退職理由のほかに問われるのは、次の4つだけです。表現が違っても中身は同じです。
質問の裏にある本当の問い
①「自己紹介をお願いします」→ この人は要点をまとめられるか
②「なぜ当社ですか」→ どこでもいいのではないか
③「これまでの実績を教えてください」→ うちで再現できるか
④「何か質問はありますか」→ 本当に関心があるか
裏の問いに答えていない限り、表面の質問にどれだけ流暢に答えても評価は上がりません。逆に、裏の問いに答えていれば、話し方が上手でなくても通ります。
答えの組み立て方
すべての回答は「結論 → 根拠 → 相手にとっての意味」の3点で組めます。
①結論を先に言う。15秒以内。面接官は同じ日に何人も会っています。最初の15秒で「この人の話は分かりやすい」と思わせられるかどうかが分岐点です。
②根拠を数字で置く。「売上を伸ばした」ではなく「担当製品の売上を2年で1.4倍にした」。数字がないと、聞き手は大きさを想像できません。
③相手にとっての意味に着地する。「その経験は、御社が今取り組まれている〇〇で使えると考えています」。ここまで言って初めて、実績が過去の話から未来の話に変わります。
この3点で1分。1分を超える回答は、ほぼ確実に長すぎます。
逆質問で何を聞くか
逆質問は評価される最後の場面であると同時に、こちらが相手を判断する唯一の場面でもあります。両方に使ってください。
評価される質問:入社後の期待、チームの構成、現在の課題、評価の基準。「自分がそこで働く前提」の質問は関心の強さとして伝わります。
こちらが確認すべき質問:残業の実態、離職率、前任者がなぜ辞めたか、決裁の流れ。ここを聞かずに入社すると、同じ理由でまた辞めることになります。
避けたい質問:調べれば分かること、待遇だけ、「特にありません」。最後の1つは関心がないと受け取られます。1つは必ず用意してください。
一人でできる練習
①声に出して録音する。頭の中で整理できていても、口に出すと崩れます。差はここに出ます。
②1分で止める。タイマーを使う。超えたら削る。
③深掘りを自分で3回する。「なぜ?」を3回重ねると、答えの浅い部分が見えます。
④本命は3社目以降に受ける。1社目は必ず本調子になりません。順番は自分で決められます。
ただし一人での練習には限界があります。自分では気づけない癖があるからです。第三者に一度見てもらうと、修正点が早く見つかります。
→ 深掘りされたときの受け方/実績の言語化/オンライン面接の作法
転職面接の準備ガイドの記事一覧
一次情報の確認先
このページに書いたことは、以下の公的機関の公表情報で確かめています。制度は変わることがあるので、確かめた日を各所に書き、確認先も置いています。