「出ない」のではなく、
「差額が出る」

給与が少しでも出ているから、もらえないと思って申請していない。そのぶん生活が足りていないのに、我慢している。年金が決まったから、傷病手当金は終わりだと言われた。どちらも、条文を読むと違います。条文が定めているのは、支給しないことではなく、差額を出すことです。

今日やること。金額を2つ並べる

比べるだけで分かります

  1. ① 傷病手当金の1日あたりの額を出す標準報酬月額の平均の30分の1の3分の2です。→ いくら入るか
  2. ② 実際に受けている報酬(または年金)の1日あたりの額を出す年金は年額を日割りにします。
  3. ③ ②が①より少なければ、差額を請求できる少ないほうを受けているなら、その差が出ます。ゼロだと思って申請していない人が、ここで取りこぼしています。
このページの内容
  1. 今日やること
  2. 給与が出ている場合
  3. 障害厚生年金が決まった場合
  4. 申請していなかった期間がある人へ
  5. 自分の場合はどうなるか
  6. よくある取りこぼし
  7. よくある疑問
  8. 一次情報

給与が出ている場合

「疾病にかかり、又は負傷した場合において報酬の全部又は一部を受けることができる者に対しては、これを受けることができる期間は、傷病手当金を支給しない。ただし、その受けることができる報酬の額が、第九十九条第二項の規定により算定される額より少ないとき…は、その差額を支給する」
健康保険法 第108条第1項

「支給しない」で文が終わっていません。ただし書があります。報酬のほうが少なければ、差額が出ます。

★年金の場合、割るのは360です。協会けんぽは「年金額の360分の1が傷病手当金の日額より低いときは、差額が支給されます」としています(2026年9月18日確認)。月割りでも365分の1でもありません。360で割ります。

自分の年金額で引ける表を置きます。傷病手当金の日額は、標準報酬月額の平均が318,100円(協会けんぽの全被保険者の平均)の場合の7,069円で計算しました。自分の日額に置き換えて使ってください。

年金の年額別に、差額が出るか(当サイト計算)

年金の年額÷360=日額傷病手当金の日額7,069円との差結論
600,000円1,667円5,402円差額が出ます
800,000円2,222円4,847円差額が出ます
1,000,000円2,778円4,291円差額が出ます
1,500,000円4,167円2,902円差額が出ます
2,000,000円5,556円1,513円差額が出ます
2,600,000円7,222円—出ません(年金のほうが多い)

年金額÷360と、傷病手当金の日額を比べます(協会けんぽの公表内容)。差額は当サイト計算。分かれ目は、年金の年額が約2,544,840円(=7,069円×360)です。これより少なければ差額が出ます。同一の傷病により障害基礎年金もあるときは合算して比べます。傷病手当金の日額は人によって違うので、自分の額で計算し直してください。

「年金が決まったから傷病手当金は終わり」と言われた人へ。上の表のとおり、年金が年約254万円を下回っていれば、差額が出ます。3級の障害厚生年金だけなら、多くの場合ここに入ります。
保険者に言う言葉はこれです。「障害厚生年金の年額は◯◯円です。360で割ると日額◯◯円で、傷病手当金の日額より少ないので、差額の支給を申請します」。数字を先に出すと、話が止まりません。

どうなるか

状況結果
報酬 > 傷病手当金の額支給されません
報酬 < 傷病手当金の額差額が支給されます
報酬なし全額が支給されます

「少しでも給与が出ていたら申請できない」は誤りです。額を比べてください。

障害厚生年金が決まった場合

「傷病手当金の支給を受けるべき者が、同一の疾病又は負傷及びこれにより発した疾病につき厚生年金保険法による障害厚生年金の支給を受けることができるときは、傷病手当金は、支給しない。ただし、その受けることができる障害厚生年金の額…につき厚生労働省令で定めるところにより算定した額…が、第九十九条第二項の規定により算定される額より少ないときは、当該額と次の各号に掲げる場合の区分に応じて当該各号に定める額との差額を支給する」
健康保険法 第108条第3項

ここも同じ構造です。比べる相手は、第99条第2項で算定される傷病手当金の額です。障害年金の額のほうが少なければ、差額が出ます。ただし、報酬や出産手当金も受けられる場合は、各号の区分に応じて引く額が変わります。

「同一の疾病又は負傷及びこれにより発した疾病につき」とあります。別の病気による障害厚生年金なら、調整の対象になりません。判断は保険者が行います。

申請していなかった期間がある人へ

差額が出ることを知らずに、申請していなかった期間があるなら、いまから請求できます。

法第193条の時効は2年です。古い月から順に消えていくので、いちばん古い月から出してください。

申請には、その期間の医師の意見書と事業主の証明が要ります。期間が古いほど、書類を集めるのに時間がかかります。→ 止まっている場所を特定する

自分の場合はどうなるか

休職中も、会社から給与の一部が出ている

額を比べてください。傷病手当金の額より少なければ差額が出ます。出ているから対象外、と決めつけて申請していない人がいます。

障害厚生年金が決まり、傷病手当金は終わりと言われた

年金の額が傷病手当金より少なければ、差額が出ます。年金の額を日割りにして比べてください。

障害手当金を受けた

別のただし書(法第108条第4項)で扱いが定められています。支給しないのは、傷病手当金の合計額が障害手当金の額に達するまでの間です。達したあとは、また出ます。保険者には『障害手当金を受けたのですが、傷病手当金はいつから再開しますか』と聞いてください。

老齢年金を受け始めた

退職後の継続給付を受けている人については、法第108条第5項に定めがあります。こちらもただし書で差額の扱いがあります。

有給を使った日が混じっている

報酬が出た日として扱われます。額を比べれば、差額が出ることがあります。

よくある取りこぼし

給与が少しでも出ていたら対象外だと思っていた

ただし書で差額が出ます(法第108条第1項)。

年金が決まった時点で申請をやめた

年金のほうが少なければ差額が出ます(同条第3項)。

別の病気の年金でも調整されると思っていた

条文は「同一の疾病又は負傷及びこれにより発した疾病につき」としています。

差額の請求も、書類は同じだと思っていなかった

同じです。医師の意見書と事業主の証明が要ります。

古い期間の分を放置していた

2年で消えます(法第193条)。

年金の額を月額で比べていた

傷病手当金は1日あたりの額です。日割りで比べてください。

よくある疑問

差額はどう計算されますか

傷病手当金の額から、報酬または年金の額を引いた額です。計算は保険者が行います。申請書には報酬の額と期間を書く欄があります(規則第84条第1項第五号)。

報酬が出ていることを書かないとどうなりますか

あとで返還を求められることがあります。法第58条は、偽りその他不正の行為によって給付を受けた場合の徴収を定めています。正確に書いてください。

年金の決定通知書は添付しますか

必要になります。規則第84条第5項が添付書類を定めています。

労災保険の休業補償給付と重なったら

業務上か業務外かで、そもそもどちらの制度かが分かれます。労災と認められた期間について傷病手当金は出ません。判断は保険者と労働基準監督署です。

差額でも、通算1年6月に含まれますか

支給された期間として扱われます。→ いつまで出るか

このサイトは、傷病手当金の手続きが実際にどう動くのかを、健康保険法と施行規則の条文で確かめて書いています。金額と支給の可否を決めるのは、加入している健康保険の保険者です。ここでは、条文で決まっていて全国どこでも同じ部分と、あなたの側から動かせる部分を書きます。病気の症状・診断・治療には触れません。

確認に使った一次情報

2026年9月15日に e-Gov法令検索で確認した条文です。金額・必要書類・審査にかかる日数は保険者によって違います。条文で全国共通なのは、支給の要件と、申請書に何を添えるかまでです。

差額だけでは足りない場合、先に確認するのは公的な窓口です。入金までのつなぎに使えるものと、恒久的に使えるものは別です。→ 入るまでの間に手を打てる公的な窓口/障害年金の請求そのものは → 障害年金の条文を確かめる

傷病手当金ガイドの記事一覧

一次情報の確認先

このページに書いたことは、以下の公的機関の公表情報で確かめています。制度は変わることがあるので、確かめた日を各所に書き、確認先も置いています。

次に見ておくガイド