初回が少ないのは、計算が間違っているからではありません
やっと振り込まれたのに、思っていた額の半分もない。計算が間違っていると思う前に、2つ確かめてください。1つは対象日数、もう1つは会社から出た報酬です。どちらも条文で決まっている引き算です。
今日やること。通知書の2か所だけ見る
振込通知(支給決定通知書)を出す
- ① 「支給対象期間」の日数を見る初回は、最初の3日が抜けています。法第99条第1項は「労務に服することができなくなった日から起算して三日を経過した日から」支給すると定めています。だから初回だけ、休んだ日数より3日少なくなります。
- ② 「1日あたりの金額」を見るここが月給の3分の2ではありません。標準報酬月額の平均の30分の1の、さらに3分の2です。残業代や手当の扱いによって、感覚とずれます。
- ③ 会社から給与や手当が出ていないか確認する出ていれば、その分だけ差し引かれます(法第108条第1項)。有給を使った日、見舞金、待機手当などが該当することがあります。→ 他の給付と重なったとき
条文が決めている計算の形
「傷病手当金の額は、一日につき、傷病手当金の支給を始める日の属する月以前の直近の継続した十二月間の各月の標準報酬月額…を平均した額の三十分の一に相当する額…の三分の二に相当する金額…とする」
健康保険法 第99条第2項
順番に割っていく
| 手順 | 何をするか |
|---|---|
| 1 | 直近12か月の標準報酬月額を平均する |
| 2 | 30で割る(1日あたりの額) |
| 3 | 3分の2をかける |
| 4 | 支給対象の日数をかける(初回は3日引いた日数) |
2026年9月15日に e-Gov法令検索で確認しました。標準報酬月額は、給与そのものではなく等級で決まる額です。自分の等級は保険者か会社で確認できます。
「月給の3分の2」と説明されることが多いのですが、正確ではありません。使うのは標準報酬月額の平均です。残業が多い月が多かった人ほど、実際の手取りとの差を感じます。
12か月に満たないとき
入社して1年たっていない場合は、別の定めがあります。
「ただし、同日の属する月以前の直近の継続した期間において標準報酬月額が定められている月が十二月に満たない場合にあっては、次の各号に掲げる額のうちいずれか少ない額の三分の二に相当する金額…とする」
健康保険法 第99条第2項ただし書
「いずれか少ない額」です。1つは、その人の標準報酬月額の平均。もう1つは、その保険者の全被保険者の標準報酬月額の平均額として定められた額です。給与が高い人ほど、後者に引っ張られて下がります。
つまり入社1年未満で、標準報酬月額が318,100円を超えている人は、318,100円で計算されます。月給40万円でも、日額は318,100 ÷ 30 × 2/3 = 約7,069円。ここが「思ったより少ない」のいちばん大きい理由です。健康保険組合の場合はその組合が定める額になるので、組合に聞いてください。
金額の表を置きます。自分の標準報酬月額の平均が分かれば、日額はこれで出ます。
標準報酬月額の平均別の傷病手当金(当サイト計算)
| 標準報酬月額の平均 | 1日あたり | 30日分 | 初回(3日引いた27日分) |
|---|---|---|---|
| 200,000円 | 4,444円 | 133,320円 | 119,988円 |
| 260,000円 | 5,778円 | 173,340円 | 156,006円 |
| 318,100円(協会けんぽの平均) | 7,069円 | 212,070円 | 190,863円 |
| 380,000円 | 8,444円 | 253,320円 | 227,988円 |
| 440,000円 | 9,778円 | 293,340円 | 263,406円 |
計算式:標準報酬月額の平均 ÷ 30 × 2/3(健康保険法第99条第2項)。当サイトが計算しました。端数処理は保険者が行うため、実際の支給額は数円ずれます。「初回」は待期3日を引いた27日分で計算した目安です。会社から給与や手当が出ていれば、その分は差し引かれます(法第108条第1項)。
保険者に聞く言葉はこれです。「日額の計算に使った標準報酬月額の平均はいくらですか。12か月分ありましたか。会社からの支払いで差し引いた額はありますか」。この3つで、ずれの原因は必ず特定できます。
最初の3日はなぜ出ないのか
「被保険者…が療養のため労務に服することができないときは、その労務に服することができなくなった日から起算して三日を経過した日から労務に服することができない期間、傷病手当金を支給する」
健康保険法 第99条第1項
「三日を経過した日から」。この3日を待期といいます。条文に「連続して」という言葉はありませんが、実務では連続した3日で成立するものとして運用されています。
待期は、最初の1回だけです。同じ病気で休みが続くかぎり、2回目以降の申請で3日引かれることはありません。初回だけ少ない、というのはこの意味です。
計算しても合わない人へ
金額が合わないときに見る場所は、3つだけです。
差が出る原因
- 支給対象期間が思っていたより短い → 初回の3日、または申請した期間の書き方
- 報酬が出ていた → 差額だけの支給になります(法第108条第1項)
- 障害厚生年金を受けている → 調整されます(法第108条第3項)
- 標準報酬月額が想像より低い → 等級は給与そのものではありません。保険者に確認できます
- 12か月に満たない → 「いずれか少ない額」が使われています
それでも合わなければ、支給決定通知書の番号を控えて保険者に聞いてください。計算の内訳は、聞けば説明されます。
自分の場合はどうなるか
初回の振込が、2回目より明らかに少ない
有給を使った日が混じっている
入社半年で休職した
残業代がかなりあったのに反映されていない
いつまでこの金額が続くのか知りたい
よくある取りこぼし
月給の3分の2が入ると思っていた
標準報酬月額の平均の30分の1の3分の2です。手取りとは一致しません。
初回が少ないのを不備だと思った
待期の3日が引かれています(法第99条第1項)。
有給と併用できると思っていた
報酬が出た期間は調整されます(法第108条第1項)。
入社1年未満でも同じ計算だと思っていた
ただし書で「いずれか少ない額」になります。
標準報酬月額を知らなかった
保険者か会社で確認できます。これが分かれば自分で概算できます。
待期が毎回引かれると思っていた
最初の1回だけです。
よくある疑問
自分の標準報酬月額はどこで分かりますか
ボーナスは計算に入りますか
振込は月1回ですか
税金はかかりますか
社会保険料は休職中も引かれますか
このサイトは、傷病手当金の手続きが実際にどう動くのかを、健康保険法と施行規則の条文で確かめて書いています。金額と支給の可否を決めるのは、加入している健康保険の保険者です。ここでは、条文で決まっていて全国どこでも同じ部分と、あなたの側から動かせる部分を書きます。病気の症状・診断・治療には触れません。
確認に使った一次情報
- 健康保険法 第99条(傷病手当金)/第104条(継続給付)/第108条(報酬等との調整)/第61条(受給権の保護)/第193条(時効)/第58条(不正利得の徴収等)e-Gov法令検索
- 健康保険法施行規則 第84条(傷病手当金の支給の申請)e-Gov法令検索
- 国民健康保険法 第77条(保険料の減免等)e-Gov法令検索
- 生活困窮者自立支援法 第3条第3項(住居確保給付金)/第6条e-Gov法令検索
- 国民年金法 第90条(保険料の申請免除)e-Gov法令検索
2026年9月15日に e-Gov法令検索で確認した条文です。金額・必要書類・審査にかかる日数は保険者によって違います。条文で全国共通なのは、支給の要件と、申請書に何を添えるかまでです。
金額が想定より少ないのは、計算の仕組みによるものです。間違いを疑う前に、支給期間の残りと、他の給付との調整を確認してください。→ 「通算して1年6月」の意味/障害年金との差額は → 年金が年254万円未満なら差額が出ます
傷病手当金ガイドの記事一覧
一次情報の確認先
このページに書いたことは、以下の公的機関の公表情報で確かめています。制度は変わることがあるので、確かめた日を各所に書き、確認先も置いています。