求人の「35歳まで」は、
原則として認められていません

労働施策総合推進法第9条は、事業主に「その年齢にかかわりなく均等な機会を与えなければならない」と義務づけています。年齢で足切りするほうが例外です。
ところが求人には年齢が書いてあります。書けるのは、厚生労働省令に限定列挙された例外に当たるときだけです。20代のあなたが目にする「長期キャリア形成のため35歳まで」は、その例外のうちの1つです。
この例外には前提が付いています。そこを知っていると、求人票の見え方が変わります。

{toc([("jouban","条文はこうなっている"),("reigai","例外は6つ。その中身"), ("mikeiken","「長期キャリア形成」の枠に入るということ"), ("riyuu","年齢制限には理由が書かれる"), ("tsukaikata","この知識の使い方"), ("nendai","年齢別に、実際どう動くか")])}

条文はこうなっている

根拠は労働施策総合推進法(昭和41年法律第132号)です。
第9条「事業主は、労働者がその有する能力を有効に発揮するために必要であると認められるときとして厚生労働省令で定めるときは、労働者の募集及び採用について、厚生労働省令で定めるところにより、その年齢にかかわりなく均等な機会を与えなければならない。」
読みにくい条文ですが、意味は「年齢で区切ってよいのは厚生労働省令が認めたときだけ」ということです。
2026年9月24日にe-Govで条文を確認しました。

年齢制限は「原則禁止・例外のみ可」です。「うちは35歳までなので」と言われたとき、それは会社の自由裁量ではありません。例外のどれに当たるかが決まっています。

例外は6つ。その中身

{cmp_table("年齢制限が認められる例外(労働施策総合推進法施行規則第1条の3)", ["例外", "どんなとき", "20代に関係するか"], [["定年を下回る条件", "定年の定めがあり、その年齢未満を条件にするとき(期間の定めのない労働契約に限る)", "△"], ["法令で就業制限", "労働基準法などで特定年齢の就業が禁止・制限されている業務", "△"], ["長期勤続によるキャリア形成", "青少年その他特定の年齢を下回る労働者を募集するとき", "これが「35歳まで」の正体"], ["技能・知識の継承", "特定の年齢層が著しく少ない場合に、その層を対象に募集するとき", "○"], ["芸術・芸能", "表現の真実性などを確保するために年齢が必要なとき", "対象外"], ["高年齢者・国の施策", "60歳以上の高年齢者、または国の施策を活用して特定年齢層を募集するとき", "対象外"]], "労働施策総合推進法施行規則第1条の3を2026年9月24日に確認しました。" "各号にはさらに細かい条件が付されています。実際の求人がどの例外にあたるかは、募集要項の記載で判断されます。")}

6つのうち、20代が日常的に出会うのは3番目だけです。「長期勤続によるキャリア形成を図る観点から」という一文を見たことがあるはずです。あれは法律の言葉です。

「長期キャリア形成」の枠に入るということ

ここがいちばん使える知識です。この例外は「長く勤めてもらって、会社の中で育てる」ことを理由に、年齢で区切ることを認めるものです。だから期間の定めのない労働契約であることが前提になります。

求人票の読み方が変わります。
「長期勤続によるキャリア形成のため35歳以下」と書いてあるのに、応募条件に「実務経験3年以上」とある。
この2つは、同じ求人票の中で噛み合っていません。育てる前提で年齢を区切りながら、育つ前の人を落とす条件を置いているからです。
「未経験歓迎」なのに面接で経験を問われたら、求人票のこの部分を見返してください。

20代で未経験の職種に移りたい人にとって、この枠は味方です。年齢で区切られていること自体が、「経験ではなく伸びしろで採る枠」だという意味になります。→ 20代で未経験の職種へ

年齢制限には理由が書かれる

例外に当たる場合でも、事業主は年齢制限を設ける理由を示すことになっています。ハローワークの求人票に理由が書かれているのは、そのためです。

{checklist("求人に年齢が書いてあったら、ここを見る", [ "年齢制限の理由が書いてあるか", "理由が「長期勤続によるキャリア形成」なら、期間の定めのない募集か", "同じ求人票で実務経験の年数を条件にしていないか", "「若い人が欲しい」は理由になりません。それでは例外のどれにも当たりません", ])}

この知識の使い方

年齢制限を見つけて怒るための知識ではありません。「自分はいまこの枠で見られている」と分かるための知識です。

「長期勤続によるキャリア形成」の枠で募集されているなら、面接で見られているのは実績ではありません。「入ってから何を身につけられそうか」です。ここを取り違えて前職の実績を並べると、噛み合わなくなります。

逆に、年齢制限のない求人に応募するなら、年齢は言い訳になりません。そこでは経験で比べられます。

年齢別に、実際どう動くか

25歳まで。「長期勤続によるキャリア形成」の枠がいちばん広く使えます。未経験の職種・業界へ移るなら、この枠を正面から使うのが最短です。→ 第二新卒の転職

26〜27歳。この枠と、経験で見られる枠の両方に乗れます。同じ会社でも、募集要項によって見られ方が変わります。→ 未経験の職種へ移る

28〜29歳。「35歳まで」の枠はまだ使えますが、同じ枠に25歳もいます。伸びしろで並ぶなら若いほうが有利なので、ここからは「何ができるか」を足して戦うことになります。→ 20代の年収の上げ方

IT職への未経験転職は、この枠の使い方がとくにはっきり出ます。→ 20代でITエンジニアを目指す

20代キャリアの分岐点の記事一覧

一次情報の確認先

このページに書いたことは、以下の公的機関の公表情報で確かめています。制度は変わることがあるので、確かめた日を各所に書き、確認先も置いています。

次に見ておくガイド