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仲介とDDは、同じ人がやってはいけないことになっています

FAS・コンサル・監査法人の違いを、業務名の列挙で説明した記事は無数にあります。こちらで39本を調べたかぎり、同じ1件の案件のどこに誰が入るかを工程で並べた記事はありませんでした。

工程そのものは、国が公表しています。中小企業庁「中小M&Aガイドライン(第3版)」令和6年8月です。10段階の名前と順番が決まっています。

中小M&Aガイドライン(第3版)が定める工程と、誰が入るか

#工程(ガイドラインの表記)中心になる人そこで出てくる書類
1意思決定本人(譲り渡し側)—
2仲介者・FAの選定/仲介契約・FA契約の締結仲介者 または FA仲介契約書・FA契約書
3バリュエーション(企業価値評価・事業価値評価)公認会計士—
4譲り受け側の選定(マッチング)仲介者・FA/プラットフォーマー企業概要書
5交渉仲介者・FA意向表明書(第一次)
6基本合意の締結弁護士(契約書)基本合意書
7デュー・ディリジェンス(DD)会計士・弁護士・税理士・診断士各DD報告書
8最終契約の交渉・締結弁護士最終契約書(表明保証条項)
9クロージング——
10クロージング後(ポストM&A)会計士・診断士—

工程の名称と順番は中小企業庁「中小M&Aガイドライン(第3版)」令和6年8月の目次表記どおり。担い手は同ガイドライン第2章Vの節構成(公認会計士・税理士・中小企業診断士・弁護士)によります。

どの工程を担う側に行くのかを、求人で確かめる

同じ「M&A」でも、仲介・FA・DDのどこに入るかで仕事が変わります。求人票の職種名からは読み取れないので、中を知っている人に聞くのが早いです。

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DDは「買う側」が頼む調査です

ガイドラインの用語集が、こう定義しています。

デュー・ディリジェンス(Due Diligence)とは、対象企業である譲り渡し側における各種のリスク等を精査するため、主に譲り受け側がFAや士業等専門家に依頼して実施する調査をいう。一般的に、資産・負債等に関する財務調査(財務DD)や株式・契約内容等に関する法務調査(法務DD)等から構成される。

★ここを取り違えている記事が多いところです。DDは売る側が自分の会社を調べるのではなく、買う側が売る側を調べます。 だから「DDをやる仕事」は、買う側に雇われる仕事です。

DDの4種類と、ガイドラインが担い手として立てている士業

DDの種類何を見るかガイドライン第2章Vの節
財務DD資産・負債等に関する財務調査1 公認会計士(2)④
法務DD株式・契約内容等に関する法務調査4 弁護士(2)④
税務DD課税関係2 税理士(2)⑤
ビジネス(事業)DD事業そのもの3 中小企業診断士(2)⑤

財務DD・法務DDの定義文はガイドライン用語集。税務DD・ビジネスDDは第2章Vの各士業の節に項目として立てられています。

仲介者がDDをやらないのは、利益相反だからです

中小企業庁は、第3版への改訂の方向性を示した資料でこう書いています。

仲介者は、利益相反防止の観点からDDを直接実施すべきでない(現行ルールを継続)

理由は、仲介者が売る側と買う側の両方と契約しているからです。ガイドラインの用語集は、仲介者とFAをこう分けています。

仲介者=「譲り渡し側・譲り受け側の双方との契約に基づいてマッチング支援等を行う支援機関」
FA(フィナンシャル・アドバイザー)=「譲り渡し側又は譲り受け側の一方との契約に基づいてマッチング支援等を行う支援機関」

★転職するときに効くのはここです。仲介会社に入るのか、FAに入るのか、DDを請け負う側に入るのかで、利益相反の立ち位置が違います。 「M&Aの仕事」とひとくくりにして求人を見ると、この違いが見えません。

監査法人がアドバイザリーをやれる根拠と、その限界

条文は公認会計士法です。第2条第1項が監査証明業務、第2条第2項が非監査証明業務です。

第2条第1項 公認会計士は、他人の求めに応じ報酬を得て、財務書類の監査又は証明をすることを業とする。
第2条第2項 公認会計士は、前項に規定する業務のほか、公認会計士の名称を用いて、他人の求めに応じ報酬を得て、財務書類の調製をし、財務に関する調査若しくは立案をし、又は財務に関する相談に応ずることを業とすることができる。ただし、他の法律においてその業務を行うことが制限されている事項については、この限りでない。

★バリュエーションも財務DDも、第2条「第2項」の側です。監査ではありません。

監査法人がそれをやれる根拠は第34条の5です。

第34条の5 監査法人は、第二条第一項の業務を行うほか、その業務に支障のない限り、定款で定めるところにより、次に掲げる業務の全部又は一部を行うことができる。
一 第二条第二項の業務/二 公認会計士試験に合格した者に対する実務補習

つまり、監査法人のアドバイザリーは「その業務に支障のない限り」の付随業務です。 定款に定めがなければ行えません。

そして、同じ会社の監査と非監査を同時にやれるかは、第24条(公認会計士)・第34条の11(監査法人)の「著しい利害関係」で制限されます。 その中身は政令に委ねられており、条文だけでは決まりません。こちらでは政令までは確認していません。

非監査の比重は、10年で38%から43%になりました

金融庁の有識者検討会の事務局資料に、実数が出ています。

大手監査法人グループの非監査業務収入比率(非監査証明業務収入 ÷ グループ全体の業務収入)は、 2012年度の38%から2021年度の43%に上昇傾向。

同じ資料は、改訂倫理規則について「PIEである依頼人に対しては、自己レビューが生じる可能性のある非保証業務の提供を包括的に禁止」としていることにも触れています。

★読み方は2つです。アドバイザリーの仕事は増えている。ただし、同じ会社を監査している相手には出せない範囲が広がっている。 だから「監査法人の中でアドバイザリーをやる」と「FAS法人でアドバイザリーをやる」は、受けられる案件が違います。

→ 4法人の非監査比率の実数はBIG4の年収を法定開示で検算に載せています。PwC Japanだけが52.8%で、監査より非監査が大きい唯一の法人です。

よくある疑問

FASとコンサルと監査法人は何が違うのですか。

中小M&Aガイドラインの工程で言うと、監査法人の本来業務は第2条第1項の監査証明業務で、工程の外にあります。バリュエーション(工程3)と財務DD(工程7)は第2条第2項の非監査証明業務で、FASやアドバイザリー部門が担います。コンサルは工程の外側で、ポストM&A(工程10)の統合支援に入ることが多い領域です。

DDは誰が費用を払うのですか。

ガイドラインはDDを「主に譲り受け側がFAや士業等専門家に依頼して実施する調査」と定義しています。中小企業庁の改訂方向性資料は、譲り受け側がDD支援を受ける場合の費用も「M&Aに係るコストとなる」としています。

仲介会社がDDもやってくれますか。

中小企業庁は「仲介者は、利益相反防止の観点からDDを直接実施すべきでない」としています。仲介者は売る側と買う側の双方と契約しているためです。

未経験からFASに入れますか。

ガイドラインは工程ごとに必要な知識領域を「M&A実務知識・ビジネス知識・会計知識・法務知識・税務知識・情報管理知識」の6領域に整理しています(中小M&A専門人材向けスキルマップ、2025年4月)。どの領域を持っているかで、入れる工程が変わります。

意向表明書はどの工程で出ますか。

ガイドラインの10工程には独立した項目として立っていません。用語集では、DDに進む意向を表明する第一次意向表明書と、DDの結果を踏まえた第二次意向表明書(最終意向表明書)に分けて説明されています。

このページの出典

条文と数値は、下記の公的機関が公表しているものです。当サイトで計算した比率・換算は、本文でその旨を書いています。確認日は2026年10月3日。

工程のどこを担う求人なのかを確認する

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外資系転職ガイドの記事一覧

一次情報の確認先

このページに書いたことは、以下の公的機関の公表情報で確かめています。制度は変わることがあるので、確かめた日を各所に書き、確認先も置いています。

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