労災の治療に、
健康保険は使えません
仕事中にけがをして、とりあえず健康保険証で受診した。窓口で3割払った。よくあることですが、そのままにしておくと、あとで返還を求められることがあります。労災の治療は、本来は自己負担なしです。切り替えの手続があります。
今日やること。病院に電話するだけ
早いほど手続が軽い
- ① 受診した病院に「労災に切り替えたい」と伝える同じ月のうちなら、病院側で処理できることがあります。月をまたぐと手続が重くなるので、気づいた日に電話してください。
- ② 労災指定医療機関かどうかを聞く指定医療機関なら、様式5号(業務災害)や16号の3(通勤災害)を病院に出す形になります。指定外なら、いったん自分で払って、あとから費用を請求する形になります。
- ③ 領収書を全部残す立て替えた分を請求するのに要ります。通院の交通費も、対象になる場合があります。捨てないでください。
- ④ 会社が証明しないときも、止めない請求するのは本人です。→ 会社が証明しないとき
条文が定めている原則
「労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかつた場合においては、使用者は、その費用で必要な療養を行い、又は必要な療養の費用を負担しなければならない」
労働基準法 第75条第1項
使用者が費用を負担する、と書かれています。この災害補償の事由が生じた場合に、労災保険から療養補償給付が行われる仕組みです(労災保険法第12条の8第2項)。
だから、労災の治療で窓口負担は発生しないのが原則です。3割を払っている状態は、本来の形ではありません。
健康保険は「選べる」ものではない
「被保険者に係る療養の給付又は…傷病手当金…の支給は、同一の疾病、負傷又は死亡について、労働者災害補償保険法…の規定によりこれらに相当する給付を受けることができる場合には、行わない」
健康保険法 第55条第1項
「行わない」と書かれています。会社が「健康保険で治療して」と言っても、条文の扱いは変わりません。
そのままにしておくと、健康保険の保険者から、負担した分の返還を求められることがあります。先に切り替えておくほうが、あとの手間が小さくて済みます。
立て替えた分の戻し方
病院の種類で手続が変わります
| 受診先 | 手続 | 窓口負担 |
|---|---|---|
| 労災指定医療機関 | 病院に請求書(様式5号・16号の3)を出す | なし |
| 指定外の医療機関 | いったん払い、療養の費用の請求書を監督署に出す | いったん全額。あとで戻る |
どちらの様式になるかは、業務災害か通勤災害かでも変わります。病院と労働基準監督署に確認してください。
薬局で払った分、通院の交通費も対象になる場合があります。領収書は全部残してください。
もう何か月もたっている人へ
間に合わなかった、と思う必要はありません。
療養補償給付を請求する権利は、2年で時効にかかります(労災保険法第42条)。期間内であれば、さかのぼって請求できます。領収書と、通院した日が分かるものをそろえてください。
健康保険で受診した分の精算が必要になることがあります。順番は、まず労働基準監督署に相談、次に健康保険の保険者です。監督署で流れを聞いてから動くと、二度手間になりません。
自分の場合はどうなるか
その場では軽いと思って、健康保険で受診した
会社に「健康保険で行け」と言われた
通勤中の事故で、相手の保険で治療している
転院したい
すでに健康保険の保険者から返還を求められた
よくある取りこぼし
労災でも3割負担だと思っていた
原則として窓口負担はありません(労基法第75条第1項・労災保険法第12条の8)。
健康保険で受診したままにしていた
あとで返還を求められることがあります。
領収書を捨てた
立て替え分の請求に使います。薬局と交通費の分も残してください。
指定医療機関かどうかを確認していなかった
手続と窓口負担が変わります。
時効があることを知らなかった
療養補償給付の請求権は2年です(労災保険法第42条)。
相手方の保険会社と先に示談した
給付が受けられなくなることがあります(労災保険法第12条の4)。
よくある疑問
初診のときに労災だと言わなかったのですが
病院が労災の扱いを嫌がります
入院した場合の食事代はどうなりますか
会社に治療費を請求すればいいのですか
休んだ分の給料はどうなりますか
このサイトは、労災の手続きが実際にどう動くのかを、労働者災害補償保険法・同施行規則・労働基準法の条文で確かめて書いています。労災に当たるかどうかを決めるのは、会社ではなく労働基準監督署です。ここでは、条文で決まっていて全国どこでも同じ部分と、本人の側から動かせる部分を書きます。病気やけがの症状・診断・治療には触れません。
確認に使った一次情報
- 労働者災害補償保険法 第7条(業務災害・複数業務要因災害・通勤災害)/第13条(療養補償給付)/第14条(休業補償給付)/第12条の8/第12条の4(第三者行為災害)e-Gov法令検索
- 労働者災害補償保険法施行規則 第23条(事業主の助力等)e-Gov法令検索
- 労働基準法施行規則 別表第一の二(第35条関係・業務上の疾病の範囲)e-Gov法令検索
- 労働基準法 第75条(療養補償)/第76条(休業補償)/第83条(補償を受ける権利)e-Gov法令検索
- 労働者災害補償保険特別支給金支給規則 第3条(休業特別支給金)e-Gov法令検索
- 健康保険法 第1条(目的・業務災害以外)/第55条(他の法令による保険給付との調整)/第99条(傷病手当金)e-Gov法令検索
- 厚生労働省「労災保険の請求は、事業主や医療機関の証明書がなくても受け付けます」厚生労働省
- 公益財団法人 労災保険情報センター「事業主が証明を拒否」労災保険情報センター
- 厚生労働省「総合労働相談コーナーのご案内」(各都道府県労働局・労働基準監督署内など378か所/無料・予約不要)厚生労働省
2026年9月16日に e-Gov法令検索と厚生労働省のページで確認しました。労災に当たるかどうかの判断と、給付の決定は労働基準監督署が行います。条文で全国共通なのは、誰が請求するのか、事業主に何の義務があるのかまでです。
立て替えた治療費を、会社都合のままにしない
労災を使わせない職場では、治療費の立て替えがそのまま自己負担で終わることがあります。療養補償給付は本来、自己負担がありません。辞めることまで考えているなら、立て替え分や未払い分の請求も含めて無料で相談できます。相談しただけで辞めることにはなりません。
- いま動かなくて構いません。どんな選択肢があるかを見るだけで終われます
- 在職中でも使えます。会社に知られる仕組みではありません
- 相談は無料。対応できる範囲を聞いてから、頼むかどうかを決められます
労災ガイドの記事一覧
一次情報の確認先
このページに書いたことは、以下の公的機関の公表情報で確かめています。制度は変わることがあるので、確かめた日を各所に書き、確認先も置いています。