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会社が書かない=申請できない、
ではありません

「労災にするな」「うちは労災を使わない」。そう言われて止まっている人が多くいます。逆らえば居場所がなくなるかもしれない。従えば治療費と休んだ分を自分で負担することになる。どちらを選んでも生活が壊れそうに見える。そのうえ、心のどこかで「自分の不注意だったかもしれない」とも思っている。この状態では、誰でも動けなくなります。

先に3つだけ置きます。①不注意は、労災保険が給付しない理由に入っていません(給付しないのは「故意」「故意の犯罪行為」「重大な過失」の場合です/労災保険法第12条の2の2)。②会社の同意は、請求の条件になっていません。③いま、会社と争うかどうかを決める必要はありません。今日やるのは、記録を残すことだけです。

今日やること。会社と話す前に

★できるのは1つだけで構いません。上から効く順です

  1. ① 記録を時系列で書き出す発生日時・場所・作業内容・報告した相手と日時・目撃者・受診日。話し合いの前にやってください。話したあとだと、言われた内容に引っ張られます。
  2. ② 会社への依頼を、文字で送る「労災申請に必要な事業主証明をお願いします」。用件はこれだけで足ります。理由を説明する必要も、謝る必要もありません。断られた場合も、断られたことが記録として残ります。
  3. ③ 労働基準監督署に電話する「会社が労災と認めない」「事業主証明を拒否されている」と、そのまま言ってください。証明が得られない場合にどう提出するかを、そこで確認できます。
  4. ④ 病院に労災であることを伝える健康保険証のまま治療を続けないでください。→ 治療費は誰が払うのか

③は、会社の許可なく電話できます。「まだ会社と話がついていないのですが」と前置きして構いません。それも含めて相談です。

このページの内容
  1. 今日やること
  2. 条文は、断ることを想定していない
  3. 会社が嫌がるのはなぜか
  4. そのまま使える文面
  5. それでも動かない人へ
  6. 報復が怖い人へ
  7. 自分の場合はどうなるか
  8. よくある取りこぼし
  9. よくある疑問
  10. 一次情報

条文は、断ることを想定していない

「事業主は、保険給付を受けるべき者から保険給付を受けるために必要な証明を求められたときは、すみやかに証明をしなければならない」
労働者災害補償保険法施行規則 第23条第2項

「求められたときは、すみやかに証明をしなければならない」。義務として書かれています。

そして、請求そのものは本人が行います。労災保険法第12条の8第2項は、保険給付を「その請求に基づいて行う」としています。請求者は労働者です。会社が請求する仕組みではありません。

傷病手当金と、労災の違い

健康保険の傷病手当金労災保険
事業主の証明申請書に添付しなければならない(健保則第84条第2項)事業主には、求められたら証明する義務がある(労災則第23条第2項)
決めるのは保険者(協会けんぽ・健保組合)労働基準監督署
会社が書かないとき保険者に相談する監督署に相談する

2026年9月15日に e-Gov法令検索で確認しました。どちらも、会社が「認めない」と言えば終わる制度ではありません。

会社が嫌がるのはなぜか

相手の事情が分かると、話し方が変わります。

よくある会社側の事情

4つ目は珍しくありません。「監督署に聞きながら進めますので、証明だけお願いします」と言うと、進むことがあります。

そして、どれもあなたが治療費と休業分を負担する理由にはなりません。

そのまま使える文面

コピーして送れる1〜2行

会社に理由を説明する必要はありません。制度上の手続として淡々と進めるほうが、揉めにくくなります。

それでも動かない人へ

証明がもらえないまま止まる必要はありません。

事業主の証明がなくても、請求書は提出できます。厚生労働省は「事業主や医療機関の証明が受けられなくても請求書を受け付けております」と公表しています。公益財団法人労災保険情報センターも「事業主が証明を拒否した場合でも、労働基準監督署へ請求書を提出することができます」としています。

ただし、そのときに拒否の理由を説明する必要があります。だから、いつ・誰に・どう言われたかを書いたものを持っていってください。②で文字にして残しておくのは、このためです。

監督署は、労災に当たるかどうかを調査する立場です。会社の主張と食い違っていることは、相談を妨げる理由になりません。

報復が怖い人へ

「申請したら辞めさせられるのではないか」という不安は、ここでいちばん多いものです。

そして覚えておいてほしいのが、労働基準法第83条第1項です。

「補償を受ける権利は、労働者の退職によつて変更されることはない」
労働基準法 第83条第1項

仮に辞めることになっても、補償を受ける権利は変わりません。「辞めさせられたら終わり」ではないので、申請を諦める理由にはなりません。→ 辞めても続きます

不利益な扱いを受けたと感じたら、その事実も日付つきで記録して、監督署や労働局に伝えてください。

自分の場合はどうなるか

「労災を使うと会社が潰れる」と言われた

労災保険は、そのために国が運営している保険です。会社の負担の話と、あなたが治療費を自分で払う話は別です。

会社が労災保険に入っていないらしい

未加入でも、労働者の請求は受け付けられる仕組みです。未加入の事業主に対する扱いは別に定められていて、あなたの給付とは切り離されています。監督署には『会社が労災保険に入っていないようですが、請求できますか』と聞けば通じます。

正社員ではないので、対象外だと言われた

条文は「労働者」としており、雇用形態で分けていません。アルバイト・パート・日雇いでも対象です。

上司に報告していなかった

報告していないこと自体で対象外になるわけではありません。いつ・どこで・何をしていて起きたかを、いま書き出してください。受診記録も証拠になります。

会社が「健康保険で治療しろ」と言う

健康保険法第55条第1項は、労災に相当する給付を受けることができる場合、健康保険からの給付は行わないとしています。会社の指示で選べるものではありません。→ 治療費は誰が払うのか

よくある取りこぼし

会社の同意が必要だと思っていた

請求するのは本人です。

口頭で頼んで、断られて終わりにした

文字で残してください。断られた記録が次の手続で役に立ちます。

監督署は会社が行くところだと思っていた

労働者本人が相談できます。

報復が怖くて、記録も取らなかった

記録は、あとで自分を守るものです。出すかどうかは、あとで決められます。

辞めることになるから無駄だと思った

退職によって権利は変更されません(労基法第83条第1項)。

会社の言うとおり健康保険で治療を続けた

あとで返還を求められることがあります。

よくある疑問

事業主証明がない請求書は受け付けてもらえますか

受け付けられます。厚生労働省は「労災保険による給付…の請求にあたって、事業主や医療機関の証明が受けられなくても請求書を受け付けております」と公表しています。公益財団法人労災保険情報センターも「事業主が証明を拒否した場合でも、労働基準監督署へ請求書を提出することができます」としています。ただし、その際に拒否の理由等を説明する必要があります。いつ・誰に・どう言われたかを書いたものを持っていってください。

会社に内緒で進められますか

調査の過程で会社に確認が入ることはあります。完全に知られずに進む前提では考えないほうが安全です。相談の段階で何が起きるかは、監督署に聞けます。

すでに退職してしまいましたが、間に合いますか

退職後も請求できます。→ 辞めても続きます

弁護士に頼まないと無理ですか

まず監督署です。費用がかからず、制度の担当窓口です。会社との間で損害賠償の話になるなら、そこで弁護士の出番になります。

休んでいる間の給料はどうなりますか

最初の3日と4日目以降で、払う相手が変わります。→ 休んだ分の給料はどうなるか

このサイトは、労災の手続きが実際にどう動くのかを、労働者災害補償保険法・同施行規則・労働基準法の条文で確かめて書いています。労災に当たるかどうかを決めるのは、会社ではなく労働基準監督署です。ここでは、条文で決まっていて全国どこでも同じ部分と、本人の側から動かせる部分を書きます。病気やけがの症状・診断・治療には触れません。

確認に使った一次情報

2026年9月16日に e-Gov法令検索と厚生労働省のページで確認しました。労災に当たるかどうかの判断と、給付の決定は労働基準監督署が行います。条文で全国共通なのは、誰が請求するのか、事業主に何の義務があるのかまでです。

証明を断られた記録を持ったまま、ひとりで交渉しない

事業主証明を断られた人がいちばん苦しいのは、断った相手と毎日顔を合わせながら手続を進めなければならない点です。証明が無くても労働基準監督署は請求を受け付けます。そのうえで、この会社を辞めることまで考えているなら、未払い分の請求も含めて無料で相談できます。相談しただけで辞めることにはなりません。

料金・対応範囲は公式サイトの公表値です。法律事務は弁護士のみが行えます。相談は無料。広告(PR)を含みます。

労災ガイドの記事一覧

一次情報の確認先

このページに書いたことは、以下の公的機関の公表情報で確かめています。制度は変わることがあるので、確かめた日を各所に書き、確認先も置いています。

次に見ておくガイド