寄り道したから駄目、
とはかぎりません
帰りにスーパーに寄った。子どもを迎えに行った。その途中で転んだ、事故に遭った。「寄り道していたから労災にならない」と言われて、そこで手が止まっている人がいます。痛みが残っているのに、自分が悪かったのだと思い込んでしまう。条文には、戻ったあとは通勤として扱う例外が書かれています。
今日やること。事実を分けて書く
判断する前に、書き出す
- ① いつ・どこで・何をしていたかを、時刻つきで書く職場を出た時刻/寄った場所と用件/出た時刻/事故が起きた時刻と場所。「寄り道していた」とひとことでまとめないでください。分けて書くと、扱いが変わることがあります。
- ② 事故が起きたのが、寄り道の「間」か「戻ったあと」かを確かめるここが分かれ目です。用事を済ませて通常の経路に戻ってからなら、通勤として扱われる場合があります。
- ③ 用件が日常生活上必要な行為にあたるかを確認する日用品の購入、通院、家族の介護など、省令で定められたものがあります。該当するかの判断は労働基準監督署です。自分で決めて諦めないでください。
- ④ 労働基準監督署に、書き出したものを持って相談する会社が「通勤災害にならない」と言っても、決めるのは監督署です。
条文の書き方
「労働者が、前項各号に掲げる移動の経路を逸脱し、又は同項各号に掲げる移動を中断した場合においては、当該逸脱又は中断の間及びその後の同項各号に掲げる移動は、第一項第三号の通勤としない」
労働者災害補償保険法 第7条第3項 本文
本文だけ読むと、寄り道したら、その後もずっと通勤ではなくなります。ところが、ただし書があります。
「ただし、当該逸脱又は中断が、日常生活上必要な行為であつて厚生労働省令で定めるものをやむを得ない事由により行うための最小限度のものである場合は、当該逸脱又は中断の間を除き、この限りでない」
労働者災害補償保険法 第7条第3項 ただし書
「当該逸脱又は中断の間を除き、この限りでない」。つまり、寄り道の間は通勤ではないが、通常の経路に戻ったあとは通勤として扱われる、という書き方です。
戻ったあとの扱い
どこで起きたかで変わります
| 起きた場所 | 扱い |
|---|---|
| 通常の経路の上(寄り道の前) | 通勤 |
| 寄り道している間 | 通勤ではない(ただし書に当たる場合も、この間は除かれる) |
| 用事を済ませ、通常の経路に戻ったあと | ただし書に当たる行為なら、通勤として扱われる |
| ただし書に当たらない寄り道のあと | その後も通勤としない(本文のとおり) |
2026年9月15日に e-Gov法令検索で確認しました。「日常生活上必要な行為」の中身は厚生労働省令で定められています。該当するかの判断は労働基準監督署が行います。
だから、事故が起きた時刻と場所が決定的です。細かく思い出すのは大変ですが、ここだけは急いでやってください。「寄り道していました」で終わらせず、経路に戻っていたかどうかまで書いてください。
会社に否定された人へ
会社が「通勤災害にならない」と言っても、それは判断ではなく意見です。言い返せずに引き下がったことを、自分の弱さだと思う必要はありません。
通勤災害に当たるかどうかを決めるのは労働基準監督署です。会社が請求書の事業主証明を書かない場合の進め方もあります。→ 会社が証明しないとき
相手のいる事故のとき
通勤中の交通事故は、相手方がいることが多くなります。ここで先に示談してしまうと、労災の給付が受けられなくなることがあります。
「前項の場合において、保険給付を受けるべき者が当該第三者から同一の事由について損害賠償を受けたときは、政府は、その価額の限度で保険給付をしないことができる」
労働者災害補償保険法 第12条の4第2項
示談の前に、労働基準監督署に相談してください。相手方の保険会社から急かされても、その場で署名しないことです。
自分の場合はどうなるか
帰りにスーパーに寄って、店を出てから経路に戻った先で転んだ
保育園に子どもを迎えに行く途中だった
飲み会に参加したあとに帰る途中だった
いつもと違う道を通っていた
会社が「通勤災害は対象外」と言う
よくある取りこぼし
寄り道したら全部駄目だと思っていた
ただし書があります(法第7条第3項)。
事故の時刻と場所を細かく書かなかった
経路に戻ったあとかどうかで扱いが変わります。
会社の判断で諦めた
決めるのは労働基準監督署です。
相手方の保険会社と先に示談した
給付が受けられなくなることがあります(法第12条の4第2項)。
通勤災害は労災ではないと思っていた
法第7条第1項第3号の保険給付の対象です。
最初の3日も同じだと思っていた
業務災害とは扱いが違います。
よくある疑問
単身赴任先と家族の住む家の往復は通勤ですか
副業先へ移動する途中は通勤ですか
自転車通勤でも対象ですか
会社に届け出ていない経路でした
会社が証明してくれません
このサイトは、労災の手続きが実際にどう動くのかを、労働者災害補償保険法・同施行規則・労働基準法の条文で確かめて書いています。労災に当たるかどうかを決めるのは、会社ではなく労働基準監督署です。ここでは、条文で決まっていて全国どこでも同じ部分と、本人の側から動かせる部分を書きます。病気やけがの症状・診断・治療には触れません。
確認に使った一次情報
- 労働者災害補償保険法 第7条(業務災害・複数業務要因災害・通勤災害)/第13条(療養補償給付)/第14条(休業補償給付)/第12条の8/第12条の4(第三者行為災害)e-Gov法令検索
- 労働者災害補償保険法施行規則 第23条(事業主の助力等)e-Gov法令検索
- 労働基準法施行規則 別表第一の二(第35条関係・業務上の疾病の範囲)e-Gov法令検索
- 労働基準法 第75条(療養補償)/第76条(休業補償)/第83条(補償を受ける権利)e-Gov法令検索
- 労働者災害補償保険特別支給金支給規則 第3条(休業特別支給金)e-Gov法令検索
- 健康保険法 第1条(目的・業務災害以外)/第55条(他の法令による保険給付との調整)/第99条(傷病手当金)e-Gov法令検索
- 厚生労働省「労災保険の請求は、事業主や医療機関の証明書がなくても受け付けます」厚生労働省
- 公益財団法人 労災保険情報センター「事業主が証明を拒否」労災保険情報センター
- 厚生労働省「総合労働相談コーナーのご案内」(各都道府県労働局・労働基準監督署内など378か所/無料・予約不要)厚生労働省
2026年9月16日に e-Gov法令検索と厚生労働省のページで確認しました。労災に当たるかどうかの判断と、給付の決定は労働基準監督署が行います。条文で全国共通なのは、誰が請求するのか、事業主に何の義務があるのかまでです。
通勤災害を認めないと会社に言われたとき
通勤災害にあたるかを決めるのは会社ではなく、労働基準監督署です。会社が「それは通勤災害ではない」と言っても、請求はできます。そのうえで、会社との関係がこれ以上もたないと感じているなら、退職と未払い分の請求をまとめて無料で相談できます。
- いま動かなくて構いません。どんな選択肢があるかを見るだけで終われます
- 在職中でも使えます。会社に知られる仕組みではありません
- 相談は無料。対応できる範囲を聞いてから、頼むかどうかを決められます
労災ガイドの記事一覧
一次情報の確認先
このページに書いたことは、以下の公的機関の公表情報で確かめています。制度は変わることがあるので、確かめた日を各所に書き、確認先も置いています。